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認知症をきたす病気について


皆さん、こんにちは。

院長の中野正剛です。

今回からは認知症をきたす疾患についてお話しようと思います。前々回にお示しした頻度の高い順に説明していきます。

アルツハイマー型認知症

ご存知の様に認知症をきたす病気の中で最も多いと言われています。

まずはこの病気の歴史についてお話していきましょう。

アルツハイマー型認知症の歴史

アロイス アルツハイマー 医師(Alois Alzheimer ) 1864-1915 はドイツの精神科医であり、神経病理学者でした。彼はフランクフルトの精神科病院の医長をしていた1901年、入院してきたアウグステ Dという51歳の女性を診察しています。女性は隣人と夫が浮気をしていると言ってひどく興奮しており、診察時には自分の名前の綴りも書けない状態でした。その当時、認知症の原因については脳梗塞・脳出血によるものか梅毒によるものが殆どと考えられていましたが、アルツハイマー医師はこの女性はそれらとは違うと考えた様です。1905年に入院していたその女性が亡くなった知らせを異動先のミュンヘン大学精神科で受けた際、その女性の脳をフランクフルトからミュンヘン大学へ運び病理解剖を行っています。1906年に病理標本の観察でわかった知見からこれまで知られている病気とは異なる変化が脳で起きており、それが認知症の原因となることを学会で発表しました。しかし、学会に参加した人たちは誰も興味を示さず質問もないまま発表を終えています。その後1911年にアルツハイマー医師の上司であったミュンヘン大学精神科教授のクレペリンは編纂した教科書の中でアルツハイマーが発表した病気について記載しており、最初に発見したアルツハイマー医師の名前を採ってアルツハイマー病と名付けています。その後は一部の医師の間でのみ知られている病気であり、一般の皆さんがこの病気の名前を知ることになるには1980年代まで待たねばなりませんでした。

1980年代に医学の分野で革新的な技術が導入されました。CTスキャン装置が実用化され、臨床の現場で使用される様になったのです。

それまでは患者さんが亡くなり脳を取り出さなければ断面を見ることができませんでしたが、頭部CT検査を行うことで生きているうちに脳の断面を見ることができる様になったのです。

認知症を来している方の頭部CT検査を行うことで認知症の原因としてアルツハイマー型認知症と診断される方が増え、病名を聞いた患者さんやご家族がこの病気について知る様になっていきました。

1990年代には脳核医学検査(RI検査)でもCTスキャンの技術が導入され、脳血流SPECT検査が臨床で広く行われる様になりました。この結果、アルツハイマー型認知症の診断技術は進歩し、正確に認知症を診断しようという潮流が生まれて来ました。また、アルツハイマー型認知症の治療薬の研究開発も行われる様になりました。

 

次回は現時点におけるアルツハイマー型認知症の診断についてお話しようと思います。

 

#もの忘れ外来 #認知症