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レカネマブについて


皆さん、こんにちは。院長の中野正剛です。

前回のコラムの終わりで次回はアルツハイマー型認知症の診断の流れについてお話すると予告しておりましたが、本日エーザイ株式会社よりレカネマブについて発表がありましたので予定を変更してお話いたします。

プレスリリースはこちらになります。→ https://www.eisai.co.jp/news/2022/pdf/news202285pdf.pdf

レカネマブ

レカネマブは軽度認知障害から軽度のアルツハイマー型認知症の方に対する治療薬として開発されました。正式には抗アミロイドβ(Aβ)プロトフィブリル抗体レカネマブ、といいます。(エーザイさんの開発コードはBAN2401となりますが、一般の皆さんにはあまり関係はないかもしれません。)

前回のコラムで説明したA、すなわちアミロイドβ蛋白に対する治療薬であり、脳内からアミロイドβ蛋白を取り除く効果が期待され開発が進められました。抗体薬ですので内服薬や貼り薬ではなく点滴で投与されます。

レカネマブ以前には同じくエーザイ株式会社から抗体薬のアデュカヌマブが開発され、北米での承認は取れましたが日本での承認は見送られてきました。

我が国ではこれまで4剤が発売されてきましたがいずれも前回コラムでお話したAやTに直接作用するものではなく、間接的にアルツハイマー型認知症の病状進行を抑える役割でした。Aに対する治療薬であるレカネマブが国内で承認されれば新たな段階へアルツハイマー型認知症の治療が進歩することになります。

レカネマブともの忘れ外来について

大きな期待が持てるレカネマブですが、仮に承認され臨床で使用可能となっても幾つかの大きなハードルがあります。

まずは価格についてです。アデュカヌマブがあまりにも高額となることを報道で目にされた方もいらっしゃると思います。国民皆保険制度の導入されている我が国でレカネマブがどの程度の価格となるか気になるところです。

さらに承認された後、どういった方に投与されるべきであるかの議論がなされると思います。臨床試験に参加された方の認知機能の程度は軽度認知障害から軽度のアルツハイマー型認知症とのことですので、できるだけ軽い段階で投与されるべき薬剤であることは間違いありません。

今後のもの忘れ外来のあり方についてですが、軽度認知障害の方をいかにして見つけ出すのか診断に携わる医師の技量が問われる事になるでしょう。

また、軽度認知障害と診断してもアルツハイマー型認知症の病変であるAが確実に存在していなければレカネマブは投与できません。これまでの臨床試験ではアミロイドPETや脳脊髄液の検査でAの存在を明らかにした上で投与がなされてきました。しかし実臨床では高価なアミロイドPETを片っ端から行うことは許されないでしょうし、脳脊髄液の採取は脳外科や脳神経内科のクリニック以外のクリニックではハードルが高いと思います。また、高齢者になると腰椎の変形が強いため脳脊髄液の採取が困難な場合があります。

まだ保険承認されていませんが、今後は血液検査でのスクリーニングが行われ、Aが脳内にあると予想される方にアミロイドPETや脳脊髄液の採取が行われる様になるのではないかと予測しています。

国内での保険適応とはなっていませんが、レカネマブは大いに期待できる薬剤であるといえるでしょう。今後の承認について注視していきたいと思います。

 

#もの忘れ外来 #認知症 #レカネマブ